校長だより    ~ 感謝、全力、チーム日高! ~

2019年3月の記事一覧

平成30年度第3学期終業式講話

 いよいよ、平成30年度も終業式となりました。今年度は、皆さんにとってはどのような1年だったでしょうか?

 たくさん学びましたか? たくさん思い出を作れましたか? 授業に集中できましたか? 部活動も頑張ったと胸を張れるでしょうか?

 皆さんの努力が実り、2年生は3年生に、1年生は2年生になります。次の目標を定めて、その実現に向け、頑張ってください。来年度は、平成が終わり新しい元号となります。また、選挙の年だそうです。18歳になると選挙権が与えられます。国民の権利をぜひ行使してください。

 

 さて私事ですが、この3月31日で定年退職を迎えます。教員となって37年経ちました。私は「後で悔いることはしない」をモットーにしてやってきました。こうしておけばよかった、あーしておけばよかった、などと後悔する人生は送らないと心掛けてきましたが、まあ実際は、そうカッコ良くはいかず、後悔の連続だったような気がします。

 そんな教員生活でしたが、今日は、最初に私が担任したある男子生徒(T君)についてお話をします。

 T君には、お父さんとお母さんがいませんでした。早々に市役所の方が来て、生い立ちや今後の生活に関する説明をされました。「心配なので、遺児年金の通帳と印鑑を担任の先生が管理してください」と言われました。私に務まるか不安でしたが、神様が与えてくれたチャンスかもしれないと思い、全力で支援しました。T君は、前向きで人間関係を作るのが上手でした。小さい頃から剣道を習っていたので、技術にも長けており礼儀作法もわきまえていました。時おり寂しそうな顔をするものの、程よい距離感を持ってクラスに居場所を作っていました。クラスの生徒も穏やかで、優しい雰囲気だったのかなと思います。剣道の顧問の先生も熱心に指導してくださいました。

 一番、心配だったのは進路選択です。経済的問題で進学はできない、住み込みで働けるところを探しましたがそうはありません。さんざん悩んで悩んで、さらに紆余曲折があり、自衛隊に決め大宮に配属されました。仕事はずいぶんと厳しかったようですが、剣道もでき、資格も取れ、給与ももらえるということで、我慢して頑張っていました。その頃、近くにある道場で子供たちに剣道を教えていました。そこで、彼の人生を大きく変える出会いを経験します。ある大きな病院を経営している方と知り合い、信頼関係を構築して、その方の紹介で転職することになります。結局、自衛隊は4、5年くらいで退職し、その病院の事務として働くことになりました。

 そしてまた、出会いや別れがあり、今は、茨城県にある病院で事務長として働いています。今でも毎年お手紙をいただき、数年に一回は会って話をしています。「人との出会いってホント不思議なものですね。」彼がよく口にする言葉です。同級生は「あいつはラッキーな奴だ」とか「上手いことやってる」とか言っていますが、私はそうではないと思っています。彼自身の行動、考え方、礼儀、まごころ、それにちょっとした我慢強さ、そういった全てのことが、良い出会いを必然的に引き起こしている、と私は思っています。何事も理由や原因があるのです。人生良いことばかりではありません。つらい時期もあります。しかし、少し時間が経てば良い状況になるかもしれません。その後、また良くない状況になるかもしれませんが、さらにまた我慢しているうちに事態は良い方向に進むかもしれません。

 大切ことは、
 ・一日一日を大切に過ごすこと
 ・すぐに諦めないこと
 ・周りの人を大切にすること
ではないでしょうか? 人生は、生い立ちや環境だけで決まるわけではない、生き方によって決まるのだというのが私の意見です。

 彼から「先生に担任してもらって本当に良かった。」と言われた時が、教員として一番嬉しい時だったかもしれません。

 

 3年間、日高高校の校長として皆さんに話をする機会をいただきましたが、今日で最後となります。今まで、静かによく聞いてくれてありがとう。校内だけでなく外であっても、よく挨拶をしてくれてありがとう。ボランティアにも積極的に参加してくれてありがとう。皆さんが体育祭や強歩大会で頑張っていた姿を私は忘れません。文化祭や修学旅行で楽しそうにしていた姿を忘れません。保護者の皆さんにも「お世話になりました」とお伝えください。

 それから先生方、これまで熱心にご指導くださり、誠にありがとうございました。

 皆さんの益々のご健勝、ご活躍、それから日高高校の益々の発展を祈念して私からの話を終えたいと思います。

第43回卒業証書授与式式辞

 

 厳しい寒さも和らぎ、春の気配が感じられる今日ここに、

   PTA会長   根岸   桜  様、

   後援会副会長  本山   洋一 様 をはじめ、多くのご来賓の皆様、並びに、保護者の皆様のご臨席を賜り、埼玉県立日高高等学校第四十三回卒業証書 授与式が盛大に挙行できますことは、私ども教職員にとりましても、この上ない喜びとするところであります。

 

 ただ今、卒業証書を授与しました、127名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 保護者の皆様にとりましても、お子様の三年間の成長を前に、喜びもひとしおのこととご推察申し上げます。

  卒業生の皆さんは、今、本校での三年間の生活を思い起こし、感慨に浸っていることと思います。修学旅行で、鹿児島の自然や文化を体感したこと、体育祭やせせらぎ祭でクラス一丸となって取り組んだこと、部活動で仲間と共に喜びや苦しみを分かち合ったこと、そして、試験前に必死になって勉強したことなど、様々な思い出が頭の中を駆け巡っているのではないでしょうか。いずれの行事でも、卒業生の皆さんが中心となり、在校生の手本として本校を盛り上げてくださいました。特に、かるた部や軽音楽部をはじめとする部活動では、見事な活躍を見せてくれました。皆さんが残してくれた成果は、在校生が引き継ぎ、新たな伝統として、さらに育んでくれるものと期待しております。

 

 さて、世界は今、格差や人権、経済や環境問題など、大きな課題が山積しております。さらに、ICT技術や人工知能の進歩・発展により、変化のその先を予測することが困難な時代になってきております。

 皆さんはこれから、このような難しい時代を生きていくことになります。しかし、恐れることはありません。皆さんはこれまで、社会に出るための準備となる学習をしっかり積んできました。いよいよ社会へ飛び立つ時、主体的に考え、行動し、自立した社会人として活躍する時を迎えたのです。

 昨年、ノーベル医学生理学賞を受賞した、本庶佑さんは、ご自身の研究人生を振り返って次のように述べています。「本当はどうなっているんだという心を大切にしてきました。」

つまり、真実を見極める眼をもつことを、大切にしてきました。そして、座右の銘は、「有志成」。難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、「強い志をしっかり持ち続ければ、必ずいつかは実現できる」という意味で、中国の「後漢書」という古典から引用した言葉だそうです。うまくいかなくて、投げ出したくなる時もあるかもしれませんが、そんな時には、本庶先生の言葉を思い出してください。

 

 では、未来に羽ばたく卒業生の皆さんに、餞の言葉として二つお話をいたします。

 

 一つ目は、常に精進を怠らず、生涯を通して、「学び続ける態度や意欲を持ち続けてほしい」ということです。昨今の科学技術は、日進月歩どころか、時々刻々と進化しております。この社会の変化に合わせて、知識や技術を身につけないと、仕事についていけないことがあるでしょう。日々、新しいことを学び続けることが求められているのです。

 私は、新しいことを学ぶ上で大切なことは、「素直さ」と「根気」であると思います。自分の世界だけでものを考え、自己主張するばかりでは、孤立してしまいます。他人の話を素直に受け入れる態度、新しいことにもチャレンジする勇気や、継続する根気強さが、ますます大切な時代になっていると考えています。

 

 二つ目は、思いやりの心を養ってほしいということです。本校では、通常の教育活動はもちろんのこと、ボランティア活動にも力を注いでまいりました。今年度は合計で14回、のべ140名の生徒がボランティア活動に参加してくれました。これは、たいへん大きな意味のある活動だと考えています。

 時代の進化に伴い、コンピュータなど機械に向かって仕事をする時間が多くなり、人間関係が希薄になりがちな時代です。このような時代だからこそ、人と人との関係・絆を大切にし、助け合いの精神と思いやりの心を持って、これからの人生を豊かなものにしてください。皆さんの限りない発展をお祈りいたします。

 

 結びになりますが、本校の教育にご理解、ご協力、ご支援を賜りました保護者の皆様、そして、本校との連携をいつも大切に考えてくださっている、日高市並びに地元小中学校や大学をはじめとする、地域の関係機関の皆様に改めて感謝を申し上げ、式辞といたします。

 

 平成三十一年三月十二日    

       埼玉県立日高高等学校長 松本 明