2016年1月の記事一覧
平成27年度第3学期始業式校長講話
皆さん、新年明けましておめでとうございます。元気に3学期を迎えられたことをうれしく思います。
始業式にあたり、昨年、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智(さとし)さんについての話をさせていただきます。
大村さんは、大学卒業後、都立高校の化学の先生になります。しかし、うまく授業を進められずに挫折感を味わいます。もう一度勉強し直さないと駄目だと思い大学院に入り、結局そのまま研究者としての道を歩みます。収入が少ない時には、奥さんが経済的に支えた時代もありました。
そして長年の研究生活の中で、大村さんは、フィラリア症という、感染症に効く、菌を発見しました。フィラリア症とは、アフリカなどに多い、感染すると失明を引き起こす、ブヨなどの寄生虫が原因の感染症です。静岡県で採取した土の中にあった菌により「魔法の薬」と言われるワクチンが出来上がりました。当初、私は、新聞記事等で読んだ時に、なぜ静岡県で採取した、ほんの爪の上に乗るほどの土から「魔法の薬」が出来たのか不思議でした。大村さんはそれを「偶然だった」と表現しています。しかし、後で分かったのですが、その偶然の産物を生み出すために、大村さんは年間2500か所の土を採取してその中にある菌を培養して研究してきたのです。財布の中に小さなビニール袋を忍ばせ、大村さん曰く、「お金はあまりありませんが、このビニール袋を絶えず持ち歩き寝ても覚めても土を採取していると、偶然、いいものが見つかるんです。」また、「金が無ければ、知恵を出せ。知恵もなければ、汗流せ、という信念で研究を進めてきました。」と言われています。
この薬は、WHO(世界保健機構)などの協力により、アフリカの奥地の医師もいない集落の、住民一人一人までに配られました。身長に応じて飲む、錠剤の数を決め、「この薬を1回飲んでください。」と説明しながら、アフリカ中に行きわたり、3億人の人々を失明から救いました。あと10年の内にフィラリア症は壊滅すると言われています。この薬はアメリカの製薬会社が開発し製品化しましたが、大村さんは最初から、特許権をアメリカのメルク社という製薬会社に譲っています。損得ではなく、「人の役にたつ仕事をする。」「一人でも多くの人を感染症から救いたい。」という思いからでありました。この製薬会社は菌の発見者の大村さんに総額250億円を贈ります。しかし、贈られた大村さんはその中の1円たりとも自分の財布に入れずに、北里研究所に寄付しています。この北里研究所は埼玉県の北本市にあります。
大村さんの、「人の役にたつ研究をする。」という長年の成果にノーベル賞が贈られました。大村さんは16年前に亡くなられた奥様の写真をいつも胸ポケットに偲び持たれていて、受賞が決まった時に「研究者として一番大変だった時に苦労して私を支えてくれた最大の理解者だった妻に真っ先に報告しました。」と言われました。大村さんは今年80歳ですが、「これからも微生物の力を借りて人類の健康と福祉に貢献したいと願っています。」と言われています。
「自分のためでなく人のために何かをする人生を歩んでいる」大村さんは本当の意味での幸せな人だと思います。
大村さんのような研究はできなくとも、「困っている人がいれば、自分の事は顧みずに、その人のために何かをしようとする心」は誰もが持っています。皆さんと共に私も、少しでもそのような人生を歩んでいけるといいなと思い話をさせていただきました。
さて、それでは、3学期は1年間のまとめになります。3年生は高校生活の総決算であるとの自覚を持って最善を尽くし卒業というゴールまで駆け抜けて下さい。1・2年生も同じです。日高高校に入学をしたのですから、高校卒業というゴールを取り消さずに最後まで走りぬいてください。一人一人が自分の課題に挑戦してください。目の前の課題から逃げずに挑戦してください。
1年間の有終の美を飾る学校生活を送っていくことを願い校長講話とします。